うったて殺人事件

『犯人は・・・そうねこの村の人物では無いと思うわ』
ミスマーブルはそういって微笑んだ。
 マーブルは村一番の好奇心の強い老婦人と思われていたが、実は素晴らしい洞察力と観察力と推理力の持ち主だったのだ。どうでもいいがそんなマーブルの趣味はガーデニング、いやほんとうにどうでもいい。
 被害者はホテルに泊まっていた外国人だった。その頭部には深々とものさしが突き刺さっていた。ものさしをここまで突き刺すのにはかなりの力が必要だったのだが、何故マーブルは村の人間を容疑者から外したのだろう。確かに村にはお年寄りが多い、しかし、若くて力のあるものも多いはずだ。そう、私の犯行は完璧、証拠など全く残していないのだ。
 『どうしてそう思われるのです?』
 スラッグ警部が聞く。
 『それはスラッグ警部、貴方が聞いた電話よ』
 私の電話?私が早く犯行を知らせたくてかけた電話の事だろうが、どこに問題があったのだろう。
 『ああ、あの訳のわからないところがあった電話ですね』
 『そうよ。人がさしで殺されてまー。おえまあがぁと言ったそうね。私はね、それを聞いたことがあるの。そう、貴方によ、トレハロールさん!』
 びしっと私を指差すマーブル。
 「よくわからないんですが、マーブルさんの勘違いでは?」
 『トレハロールさんが発見の電話をかけたのに、それを秘密にするなんて何か隠しているとしか思えないわ。だとすると村の人間が犯人とは思えない』
 「何で私が電話をかけたと?」
 『さあ、そこまではわからないわ。だけどね、この消されたダイイングメッセージ、ここの所ね、よく見て御覧なさい。おかしいでしょう?』
 「このうったてのどこが?」
 その時、私を取り囲んでいた皆の空気が変わった。
 『トレハロールさん、とにかく話をきかせてくれませんか?』とスラッグ警部。
 「いったい何の理由で!?」
 『少なくともね、トレハロールさん、ここをうったてと言う村人はいませんよ。そして物差しをさしという村人もね』
 マーブルが首を横に振った。
・・・で、では、村人達はうったてをどう言うのだ!?うったてはうったてじゃないのか!?うったて以外何と呼べば良いのだ!?・・・
 私は深い疑問に捕らわれながらスラッグと共にパトカーに乗ったのだった。
◇◇◇
そういえば夫の人の不可能犯罪殺人事件の落ちを聞いていませんでした。思い出すと気になります。
先ほど夫の人に『うったてって何?』とメールで聞くと『知らない』と返ってきたので、ぐぐって『意味わかった』と送ったら『ああ、そのうったてか』と。常識的にうったてらしいです。うったてうったて。